ここ夏文庫
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like two peas in a pad
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【2007/10/13 10:03】 | I'm here | トラックバック(0) | コメント(0) |
夜風
カーンカーンと、遅くまで高層住宅建築の音が響く。

九月の夕暮れは早く、空は刻々と色を変えていく。

作業現場なのだろうか、極端にまぶしい明かりが灯されて

たまに人の声が聞こえてくる。私はあんな高いところで仕事なんか

したくないと思う。



去年から急に車通りの多くなった道を、なんとなく他所様へ来た

ような気分で家路を辿る。歩道は広くなった。街路樹も背が高いのが

植えられた。お前も余所者かい?

後ろからやって来た自転車にジリリジリリと激しくベルを鳴らされた。

脇に避ける。歩道は広くなったけど使いにくいね。



大きな通りから一本脇道を入る。古いながら、我が家がある。

ここの風景だけは変わらない。相変わらず、威勢のいい雑草が

(名前は知らない)コンクリの壁の下から、私の背より高い位置で

ピンクとも赤ともつかない色で花を咲かせている。

お前は今年も元気だね。



家に入ると、家内が「お帰り」と言った。

うんと頷いただけで食卓の椅子に座り、リモコンでテレビのスイッチを

入れる。漫才だか、いつもと同じような番組をやっている。

家内が夕食の用意を始めた。



木造二階建て。狭いながら、立派な我が家だ。

天井を見ると、見慣れたシミが今日もある。いつからあるのか知らない。

家内が茶碗にご飯を盛って食卓に二つ置いた。

それから少々大きめな、汁が沢山入ったカップをトンと真ん中に置いた。

「おでんだよ」

うんと頷いて私は箸でカップの中身をグルグルと回した。

「だいこんとごぼう巻きと玉子があるからね」

家内が言った。

「今日からおでんが始まったんだよ」



家内はもう何年も炊事はしない。飯を炊くだけだ。

惣菜は近くの商店で買って来る。今では惣菜は何でもある。

大きな通りに出れば、目に見える範囲に三つ、商店がある。どれも二十四時間、

深夜まで開いている。子どもたちが帰って来ると、

夜中でもおやつを買いに出て行く。もう暗くて危ないからよせ、と言っても

娘は笑うだけだ。

「コンビニが明るいから大丈夫よ」

コンビニ。コンビニ。



「やっちゃんのところに、男の子が生まれたって」食後のお茶を煎れながら

家内が言った。

「やっちゃんて?」

「ヒロのところの長男の!孫の名前も忘れたの。ボケが始まったね!」

家内は意地悪い魔女のように笑った。お前だってボケてるくせに!



東京は夜の7時。テレビからは相変わらず騒がしい音が流れている。

「さて、寝るか」

家内が煎れてくれたお茶に手を付けずに立ち上がる。

家内はまた笑った。

「もう寝るの。まだ7時なのに」

【2007/10/04 20:39】 | 東京の夜は7時 | トラックバック(0) | コメント(0) |
故意
会社を出たら雨が降ってきた。バッグから折りたたみ傘を取り出す。

ちょっとモタついていたら、後ろから来た人に肩で押された。

赤信号で立っていた、その人のあとを追いかけて行き、彼の背中を押す

ように、派手に傘を広げた。



駅の改札を抜けて階段を昇っていたら、ちょうど入線していた電車から

降りてくる人の波にもまれた。後ろから私の前に割り込むようにして

入って来た男性のひじが、私の肩を突いた。私は彼を追い越し返して

ひじで軽く彼を突いた。彼は階段を降りてくる人並みに押され、ふらっと

仰向けによろめいた。



電車に乗った。帰宅ラッシュで混んでいた。一駅、扉近くの混んだ

スペースで立っていた。湿度がうっとうしい。

次の駅で、車輌の奥から人が降りた。「すみません、すみません」

彼の声に周囲の人間は動かない。彼は人にもまれるようにして出て行った。

彼の居たスペースが空いている。そこに移動しようと思った。

「すみません、すみません」私も人を押しのけ奥へと入った。

シートが空いていた。その前に大きな荷物を床に置いて、雑誌をひろげる

女性。彼女を肩で押しのけて座った。バランスを崩した振りをして

彼女の鞄を靴で蹴った。



電車を降りた。ターミナル駅は混雑を極めている。

切符なのに間違えてSuica専用出口に入ってしまった人が、慌てて引き返す。

後ろに飛び退くくらいに私に体当たりしておいて、謝りもしない。

彼の急ぎ足に絡まるように、私は瞬時に左足を出した。



エスカレーターを降りる。突然に前に立っていた男性が電話着信。携帯電話を

取り出して話を始めた。

エスカレーターを降りたところで、携帯に夢中の男性は立ち止まった。

彼のせいで私はエスカレーターから降りれなくなった。

私はバッグの中心で彼の背中を殴るようにして彼を避けた。



いつもより人の多い駅。東京は夜の7時。

地下鉄のホームを歩いていたら、運良く電車が入って来た。

いつものポジションまで急ごうと、黄色い線の内側を早歩きで進んだ。

前を歩いていた男子高校生の、大きなスポーツバッグにぶつかってしまった。

迷惑そうに顔を振り向かせた彼は、私を冷ややかな目で見詰めながら

大きなバッグを大袈裟に振って、私を黄色い線の外側へと押し出した・・・

【2007/10/04 20:38】 | 東京の夜は7時 | トラックバック(0) | コメント(0) |
少女がみた未来
その朝、少女は泣いていた。悲しそうな表情で、涙で頬をぐしょぐしょに

濡らし、キッチンの戸口に立っていた。父は少女を抱き上げて、

優しい声で聞いた。

「いったい何が、君をそんなに悲しませたんだい?」

少女は父の瞳をみつめ、さらに涙を流しながら語った。



「あのね、砂浜に綺麗なおうちをいっぱい作ったの。

 でもね、大きな波がざぶんってきて、おうちにかかって、

 それでね、おうちを海の中に引っ張っていったの。

 砂浜にね、いっぱい、いっぱい、人が死んでいたの」



父は少女の語る不気味な風景に嫌悪を覚えたが、優しく微笑んだまま、

「こわい夢をみたんだね。大丈夫だよ。海は今日も穏やかだよ」

少女を抱えたまま、父はテラスに出た。小さなギリシャの島を囲む

海は、今日も太陽の光をいっぱいにうけ、眼下に蒼くひろがっていた。



この日、父はスマトラが津波に飲まれて壊滅的ダメージを受けることを

知らなかった。



それから、少女はたびたび泣きながらベットを出てくるようになった。



飛行機が燃えて、中から黒くなったお人形がいっぱい出てきたの。

まっ白な大地で遊んでいたら急にお友達がズボっと大地に吸い込まれたの。

綺麗なお洋服を着た人たちがいっぱい、踊っていたのに偉い人が来て

その人たちを殺しちゃったの。



不気味な夢ばかり見る少女に、父は不安を覚えた。どうしてあの子は

変な夢をみるのだろう。どうして、あんなに泣くのだろう。

教会に行って、少女の苦しみを取り除いてくれるようイエスに祈った。



教会から出てくると、ニューヨークに仕事に出ていた隣の家の青年に

ばったり会った。青年は隣人の顔色が良くないことを心配した。

父はため息まじり、少女がみる夢の話をした。

青年は飛び上がるほど驚いた。そして大きな声を出して言った。

「彼女のみた夢は、すべて、現実ですよ!」



噂はあっという間に小さな島に広まった。島からアテネへ、アテネから

世界へ、未来を予知する少女の噂が広まった。



少女の話を聞こうと、多くの人が島にやってきた。少女は毎日、

大人たちに囲まれた。悪夢は前にも増して頻繁にみるようになった。

少女はマリアの化身だ!と言う大人が現れた。

少女は嘘つきだ!とを言う大人も現れた。

一緒に遊んでいた島の子どもたちに、石を投げられるようになった。

そんな子どもたちを、大人たちが容赦なく殴ったり蹴ったりした。



少女が日に日に衰弱していくので、父は心配した。少女を取り囲む

大人たちを追い払い、蒼い海の見えるテラスで少女をひざに乗せ、

「きみはちっとも悪くないんだよ」優しく話しかける。

少女は涙で赤く腫れた瞳で、蒼い海を見詰めていた。



次の日、少女の遺体が紺碧の海に浮いた。



キッチンのテーブルの上に、一枚のメモが残されていた。

少女の字だった。それは少女が残した最後の予知夢だった。

「まんまるのお月さまが出た夜

 星が怒って

 山が砕けて、海があふれて、

 人間は、みんな死んじゃった」



この不気味なメモは少女の死を知らせるニュースとともに

世界中に伝えられた。

地球に隕石が落ちる、と言い出す者がいた。

しかしそんな天体は見られないと専門家が反論した。

休火山が活動を始めて沈む島がある、と言い出す者がいた。

しかし大きな活動を始める休火山は見付からなかった。

満月の夜が来た。

人々は何に祈ればいいのか分からないまま、空を見上げて祈った。



しかし、なにも起こらなかった。明るい満月が世界のどの地点からも

観測され、美しい姿が放映された。人々の不安は怒りに変わった。

「少女は預言者でも何でもない、不気味な夢をみる狂人だった」

「人類が滅びるはずがない」

父は白いテラスの上で、今日も変わらない海を眺めていた。

少女が受けた中傷がまるで我がことのように辛かった。

自ら死を選んだ少女の気持ちを、今さらながら考えていた。

滅亡を見た少女は、人類に絶望したのだろうか。

それとも、滅亡を見た自分の人生を呪ったのか。



世界はまたいつもの生活に戻った。

工場の煙突が空を焼き、草原では地雷が爆発し、発電所からは

不要になった原子炉が運び出され、川から海へ汚染物質が流され、

人間の近寄らない島には魚と鳥の死骸が打ち寄せられ、

北極の氷山がまたひとつ海に沈み、世界の温度はまた1度上がった。

ロケットが発射され、国際宇宙ステーションはまた少し広くなった。

ロケットの破片は地球を覆う大気の上を、流される宛もなく

漂っている。



何回かの満月の夜。それは突然にやってきた。

この日、地球は突然、自転を止めた。

どかんという音と共に山という山が砕けた。海全体がまるで大きな波の

ように大陸を洗った。地殻が、マントルの上をズルリと滑ったかのようだ。

大陸のすべてのものが、瞬間にして何十キロも吹き飛ばされた。

海溝の底からガスが噴出し、まさに怒り狂いでもしたかのような炎が柱のように

幾つも立ち上った。

この地獄絵を伝える人間は、どこにも居なかった。居なくなった。



ギリシャの島も無くなっていた。大陸もなくなっていた。

白いテラスも、青い海も、何もかもがミキサーにかけられたかのように

形を失った。

ただ・・・少女の名前を刻んだ白い石の破片の上に、父の名前を刻んだ白い石が

まるで少女を包むかのように被さっていた。
【2007/10/03 00:29】 | 明けがたの夢 | トラックバック(0) | コメント(0) |
帰り道の横顔
帰り道の横顔

【2007/10/03 00:26】 | I'm here | トラックバック(0) | コメント(0) |
空気
空気

【2007/10/02 21:50】 | I'm here | トラックバック(0) | コメント(0) |
星の数
星の数

【2007/10/01 23:20】 | I'm here | トラックバック(0) | コメント(0) |
本格的に秋ですね
週末から、ガラリと変わった気候。いかがお過ごしですか?
私は体調不良ですよ。

さて。今日は設定しただけで疲れました。
もっと自分でHTMLがしがし書くBlogを利用していましたので
テンプレートずくしというのも、勝手が違うものですね、
と思いました。

こちらでは砕けたテーマを載せていこうと思います。
IT専門用語なし、ってことで。w
【2007/10/01 22:49】 | Diary | トラックバック(0) | コメント(1) |
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